No10 税務調査は監査じゃない

 

税務調査の現場で調査官は何を見ているのでしょうか。「税務調査なんだから、調査官は当然、帳簿や領収書などを見てるんでしょ?」これは半分正解ですが、半分足りません。

「税務調査は、調査であって監査ではない」ここが重要です。

監査は、監査法人が上場企業などに実施しているものです。また、上場企業ではなくても、不正をチェックするなどのために監査役を置いている企業も数多くあります。監査とは、「あるものをチェックして、間違いを発見し正すこと」を指しています。

例えば、本当は接待交際費に計上すべき経費を会議費に計上していたとします。社長からすればどっちでも同じようなものかもしれませんが、税金の計算上は違います。同じ経費でも、接待交際費であれば全額損金にすることはできないのです。つまり、会議費を接待交際費にするだけで税金が増えます。帳簿上会議費に計上されていたものが、本当は接待交際費だという誤りを見つけるのは、帳簿というあるものをチェックし、間違いを見つけるのですから、あくまでも監査の範疇です。

一方、「調査」は違います。「ないものを見つけること」が調査なのです。

例えば、現金で受け取った売上が計上されていない、取引先から受け取ったリベートが社長個人の口座に入金されている、架空の仕入が計上されている。このようなものは、当初から帳簿に計上されていないのですから、いくら帳簿をチェックしても誤りや抜け・漏れを発見することができません。

税務調査とは、ただ帳簿をめくって誤りを見つけるだけではなく、それに加えて、帳簿にない本当の取引まで見つけようとする行為なのです。怖いですね・・・

話を戻して、税務調査で調査官は何を見ているのでしょうか。帳簿や領収書など、事業の取引がわかる資料は当然ながら、調査官が注意していることは2つあります。

@社長の発言

調査官は社長の発言を誘ってきます。これは、社長の発言から、帳簿にはないお金の動きや、取引の事実を発見するためです。そのためにも、調査官に対する発言は注意すべきです。
A会社に置いている物・置いていない物
年末に取引先から送られてくるカレンダーを使っている会社も多いはずです。そのカレンダーには取引先名が入っているのですが、その社名が帳簿に載っていなかったらどうでしょうか、怪しいですよね。会社の資産になっている高級車。会社の駐車場になかったら、誰でもおかしいと思いますよね。

つまり、調査官は会社に置いている物を見て、帳簿などにないのか、もしくは帳簿には載っているのだけれど、会社にはない物を見ているのです。