No29 重加算税の具体例

 

前トピックから引続き、重加算税に関して、さらに詳細に説明をしていきましょう。

重加算税は、税務調査でもっとも問題になりやすい項目であり、かつ法律的にはかなり深い項目でもあるのです。

具体的に「隠ぺいまたは仮装」を例示すると、このような行為を指すことになります(あくまでも「例示」であることをお忘れなく)

(1) 隠ぺい
@二重帳簿の作成:税務署や税理士に見せる帳簿と、本当の帳簿を分けて作っていた場合
A売上除外:売上をわざと少なくしていた場合
B架空仕入:実際には存在しない仕入を帳簿上あったようにしていた場合
C架空経費:実際には存在しない経費を帳簿上あったようにしていた場合
D棚卸資産の除外:在庫がある会社で、決算時の棚卸を実際により少なくしていた場合
E雑収入の除外:会社が得る副収入をわざと申告しなかった場合

(2) 仮装
@取引上の架空名義の使用:存在しない取引先名を使っていた場合
A通謀虚偽表示:取引先と共謀して、実際には存在しない取引をあるようにみせかける、または金額を変えたような場合
B虚偽答弁:調査官の質問に対して嘘の回答をした場合

これらはあくまでも、「こんな悪いことをしていたら重加算税が課されますよ」という例示に過ぎませんが、重加算税が課される要件はおわかりいただけたのではないでしょうか。

さて、ここで非常に重要なことは、あくまでも重加算税の要件は「隠ぺいまたは仮装」の行為をしたということです。調査官がよく「これは不正だから重加算税ですね」という指摘は間違っています。ただ「不正」をしたから重加算税になるのではなく、あくまでも上記のような「隠ぺいまたは仮装」行為をしたから重加算税になるのです。

また、よくありがちな指摘としては、単純な「誤り」を重加算税だと言われることもありますが、これも重加算税ではありません。例えば、接待交際費をクレジットカードで支払い、クレジットカードの明細書で経費処理したにもかかわらず、店からもらった領収書でも経費処理した場合、これは経費の2重計上となり、調査官は「重加算税ですね」と言ってきます。しかし、「わざと」経費の2重計上をしたのではなく、ただ単純に誤って経費処理しただけですから、重加算税にはならないのです。

調査官の言い分を鵜呑みにはせず、重加算税の要件を満たしているかどうかだけで判断してください。