No55 「重加算税にも理由が」

 

前回解説した「理由の附記」ですが、実は更正(処分)の場合にのみ必要とされたわけではありません。あくまでも、「納税者にとって不利益な処分にはすべて理由の附記が必要」とされたわけです。
では、税務調査において更正以外に不利益な処分とは何があるでしょうか。

いくつか考えられるのですが、もっとも不利益になるのは「重加算税」でしょう。

通常、税務調査で否認されると、本税(本来払うべきであった税額の不足分)に過少申告加算税10%が上乗せされるのですが、重加算税になると35%もの上乗せになります。

さらに、重加算税になると延滞税(利息分)の計算も高くなりますので、まさにダブルパンチとなるわけです。

重加算税の要件は、簡単にいうと「仮装または隠ぺい」していたことです。
「仮装または隠ぺい」とは、たとえばこのような行為です。

「隠ぺい」:二重帳簿の作成・売上除外・架空仕入・架空経費・棚卸資産の除外・雑収入の除外等

「仮装」:取引上の架空名義の使用・通謀虚偽表示(民法94条1項)・虚偽答弁等

簡単にいえば、税金をごまかそうと悪いことをしていれば重加算税が課されるというわけですが、実態はそうではありません。

法人への税務調査が行われた件数のうち、20%に重加算税が課されています。20%もの法人が「仮装または隠ぺい」行為をしていたとは到底考えられません。
修正申告を提出したことで税務調査が終わって、後日税務署からの通知を見てみると、なんと重加算税の通知だったという話もあるくらいです。

重加算税も税務署からの「処分」にあたります。

つまり、今までは、重加算税の処分をする場合、税務署からその理由などを提示する必要がなかったのです。そのため、「仮装または隠ぺい」などしていなかったとしても、税務調査で重加算税を課されるケースが多くあったのです。

すべての処分に理由の附記が必要になったことにより、重加算税の処分をする場合にも、通知書に理由を載せる必要が生じました。これによって、今まで曖昧な基準で処分されていた重加算税も、今後は税務署も理由の附記が必要ですから、安易な処分はしてこないはずです。

「理由の附記」とは、納税者によって非常に有利な法改正だったのです。ぜひ覚えておいていただきたい制度です。