No60 「役員報酬の改定@」

 

法人の税務調査において、多額の否認指摘を受けるケースとして「役員報酬」(法律用語では「役員給与」)があります。

なぜ役員報酬を否認されると多額になるかというと、すでに役員報酬を支払っているにもかかわらず、その全額もしくは一部を否認されてしまうと、法人税の計算上「損金」(一般的にいう経費)に入れることができないため、そのまま法人税等が増えてしまうという事態になるからです。  役員報酬というのは、例えば年間1000万円支払えばそのまま損金になるのであれば、これほど簡単なことはないのですが、税法はこれほど簡単にできていないというところに問題があります。

もっともシンプルなところから解説すると、役員報酬は毎月「一定金額」であることが原則です。

例えば、毎月50万円支給していた役員報酬を、突然来月から100万円に増額することなどは認められていません。これは、法人の利益調整のために役員報酬の増減をさせないためとされています。

では、役員報酬を増減させるためにはどうすればいいのでしょうか。もっとも基本的なパターンとしては、決算期末日から3ヶ月以内に株主総会を開催し、そこで役員報酬の支給額を変更することです。 こう考えると原則は、あくまでも年に1回しか役員報酬を改定することができないということになります。だからこそ、法人の事業計画等を作るなどして、計画的に役員報酬を設定しなければ、税金上多額の負担が生じることがあります。

税務調査ではこのように、役員報酬が事業年度内に変更されていないのかチェックされるというわけです。
また、前提となるのが株主総会ですから、議事録をきちんと残しておく必要もあります。

では、役員報酬を事業年度の途中で改定することは絶対に許されないのでしょうか。

ここで税法では、「臨時改定事由」による改定というものを認めています。

役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情等により、役員報酬を改定することは認めています。

例えば、次の定時株主総会までの間に社長が退任し、平取締役が代表取締役に就任したとすれば、地位が大幅に変更になったのですから、当然に役員報酬を増額してもいいというわけです。

この点も注意が必要で、税務調査では登記の変更や株主総会の議事録をチェック、または職務内容をヒアリングされますので、対応方法は事前に協議しておくべきなのです。