No64「法律すら変わる」

 

新聞の一面を独占していたので、ご存知の方も多いと思いますが、先日最高裁判所が、民法900条4号ただし書の規定のうち、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分は、遅くとも平成13年7月当時(被相続人の死亡時)憲法14条1項に違反していたと判断しました。

法律上の婚姻関係にない男女から生まれた子(非嫡出子)の法定相続分を、法律上の婚姻関係にある男女から生まれた子(嫡出子)の2分の1と定めることが、合理的理由のない差別的取扱いにあたるかが争点でした。

決定では、昭和22年の民法改正当時の社会状況(当時非嫡出子に相続分を認めない諸外国の立法例が存在していた状況や相続財産は嫡出の子孫に承継させたいという気風など)からの変化や、平成7年に合憲決定が出された以降の諸外国の状況(相続に関する差別を廃止する立法が、平成10年にドイツで、平成13年にはフランスでなされ、嫡出子と非嫡出子の相続分に差異を設けている国は、欧米諸国にはなく、世界的にも限られた状況にあることなど。)の変化、国連関連組織から懸念や法改正の勧告を受けていたという事情、そして、社会状況の変化に伴い、非嫡出子と嫡出子を区別する法制に変化が生じているなどの事情を詳細に検討した上で、「父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許さ」ないと判断したわけです。

この最高裁判決が大きく話題になる理由は、法律そのものが否定されたということです。

つまり、法律というのは(あくまでも裁判を前提ですが)、時代・社会情勢等を鑑みた結果として不合理だと判断されれば、法律自体が間違っていると判断されることもあるということです。 この判決によって、今後相続税の金額等も大きく変わってくる可能性があります。

この事例はあくまでも、最高裁の決定であって、税務調査の現場では法律そのものを否定することはできません。

なぜなら、日本は「租税法律主義」を採用しているからです。

租税法律主義とは、何人(なんぴと)も法律の根拠がなければ、租税を賦課されたり、徴収されたりすることがないとする考え方をいいます。

簡単にいえば、税金の計算においては、法律には従わなければならない。

逆に言えば、いくら税務署に言われたからといっても、法律以外の規定を守る必要がないともいえるわけです。

この原則は非常に大事ですので、ぜひ覚えておいてください。