No67「修正申告と更正の違いA」

 

前回からの続きで、修正申告と更正の違いを解説していきましょう。

前回説明したように、修正申告と更正を比べてみると、税務調査を受ける側から考えると、どちらが不利ということはなく、むしろ不服申立てできる権利を得ることができるという意味では、更正の方が有利なのです(もちろん、更正されても不服申立てしないという選択もできます)。

実は逆の立場から考えると、税務調査で誤りがあった場合に、修正申告を出してほしいのは調査官(税務署)の方なのです。

調査官が修正申告を提出してほしいと考える3つの理由を挙げます。

@不服申立てが前提となっている
更正(処分)をすると、かなり高い割合で納税者から異議申立てが行われます。
異議申立てとは、更正処分をした(つまり税務調査をした)税務署に出されるもので、税務調査を担当した調査官とは違う調査官が実質審理(再調査)を行わなければなりません。 つまり、税務署からすると税務調査の二度手間ということで、事務量が増えるのが実態なのです。

A附記すべき理由が曖昧
税務調査において調査官が否認指摘をしたものの、その根拠が非常に曖昧であることが多くあります。
税務調査の結末が修正申告の提出ということであれば、その根拠がいくら曖昧でも、「納税者が納得して提出するもの」である以上、問題にはなりません。
しかし、更正となると、否認根拠を法令等で明確にしなければなりません。実は税務署側からすると、附記すべき理由を挙げるが最も難しいことなのです。

B税務署内の手続きが面倒
納税者が修正申告を提出すれば、基本的に調査官が上司(統括官)の決裁を得るだけで税務署内の手続きは終了します。
しかしこれが更正ということになると、これほど簡単な手続きではありません。
更正をする場合、金額にかかわらず税務署長の決裁が必要になります。
調査官は、統括官・副署長・署長と3人の決裁を必要とし、税務署内の手続きが非常に面倒であるため、調査官がやりたがらないのが実情なのです。

このように、税務調査で誤りがあった場合、そのほとんどが修正申告で終わるのは調査官側の要請なのです。

もちろん、税務調査の中で調査官の否認指摘に納得したのであれば、修正申告を提出する方が望ましいことは事実です。 その方が税務調査は早く終わるのですから。しかし、納得もせずに修正申告を提出することは危険だということがおわかりいただけたかと思います。

ぜひ、この違いを理解して税務調査に臨んでいただきたいと思います。