No9 調査官の評価

 

「調査官には追徴税額のノルマがないのであれば、あんなに無理やり追徴税額を課そうとしなくてもいいのに・・・」社長がこう思うのも当然でしょう。

さて、これにはノルマ以外のカラクリがあるのです。税務調査で調査官は件数のノルマを負っているのですが実は、「評価」は別に行われています。
調査官も公務員というサラリーマン。他の国家組織と違うのは、完全な年功序列で昇進昇格するのではない、ということです。

調査官は、今まで担当した税務調査でどれだけの増差所得(税務調査前と後で、利益の金額がどれだけ変わったのか)で評価されており、その金額が大きければ大きいほど昇進昇格が早くなり、出世できるのです

実際に国税組織では、明らかに年下の上司(統括官といいます)が、年上の部下(調査官)を使っているのを目にすることができます。出世の早い調査官は、今まで多額の増差所得を発見し、課税してきたのです。

 調査官の評価はもう1つあります。それは「不正発見割合」です。
簡単にいうと、悪いことをしている=脱税している会社を見つけた割合なのですが、具体的には、重加算税を課した割合です。税務調査を10件行い、3件重加算税を課したとすると、30%の不正発見割合ということになります。この不正発見割合が高い調査官も評価され、早く出世することができます

ここで注意が必要なのですが、出世に燃える調査官ほど、無理やりでも誤りを発見したり、特に不正を発見しようとします。しかし、実際には誤りがなくても「これは経費にできませんね」「これは売上の計上時期がズレていますね」と平気で言ってくることもあります。本当に誤りがあるのであれば、当然修正すべきですが、誤りもないのに無理やり指摘してくることに対しては、断固として反論すべきです

また昔から、「税務調査ではお土産が必要」と言われます。お土産とは、税務調査で何も誤りがない場合に、調査官としては税務署に帰りづらくなってしまうので、わざとこちらから誤りの箇所を調査官に教えてあげる、また本当は間違っていないのに、修正申告をしてあげる行為を指しています。
 確かに調査官は、誤りを見つけて評価されているわけですから、確かに何も誤りを発見できなければ、気まずい思いをしているのでしょう。

しかし、これでは何のための税務調査かわかりません。調査官の評価など気にする必要はありません。お土産を渡すことなど考える必要などないのです