前トピックから引続き、「税務調査が変わる」ことについてお伝えします。
すでに説明したように、来年からは調査官が帳簿や書類などを持って帰ったり、コピーを撮ったりすることが正式にできるようになります。これは以前から実務上は「普通」だったのですが、法律上許されるようになるわけです。
これに加えて、「留置き」の制度が新たにできることになりました。
難しい言葉で、かつ新たにできた法律ですが、意味合いは簡単です。調査官が必要だと判断するなら、みなさんが調査官に提出した帳簿や書類などを。ずっと預かることができるというものです。
すでに税務調査を受けて、調査官に書類などを貸したことがある社長であればおわかりの方もいるかもしれませんが、帳簿書類を貸し出すときには、「預り証」なる書面を調査官が発行します。「これとこれを税務署で預かりますよ」と約した書面です。
しかし、この貸し出すという行為は、あくまでも改正前(今年まで)は会社側の「任意」なわけです。調査官が「貸してほしい」と言っても、嫌だといえば断れます。また貸したとしても、経理業務などで必要な場合は、「今すぐ返却してほしい」といえば、調査官も任意で借りている以上、その要望を断ることができないのです。
今年も含めて今まではこのように、会社の意思で断れたりもした帳簿書類の貸し出しが、改正後(来年以降)は法律で明記される以上、会社の「任意」ではなく、調査官の「権限として」できるようになるのですから、前項と同じく、調査官の権限レベルが上がった、もしくは新たな権限が追加されたと言っていいでしょう。
ちなみに改正後(来年以降)で、いったんは貸し出すにしても、「業務に支障をきたすので、返却してください」と調査官に依頼すれば返却してくれるのか、もしくは、いつになったら返却されるのかについては、法律上明記されていることではありません。正確に説明しておくと、法律にはこう書かれています。
「留め置いた物件につき留め置く必要がなくなったときは、遅滞なく、これを返還しなければならない」
これでは、調査官(税務署)の判断で、返却するのかしないのかを決めることができることになり、貸した会社が圧倒的に不利になります。
どちらにしても貸し出さなければならないのであれば、面倒ですが、コピーをとってから渡すようにした方が無難だと言えます。
またこの制度ができても、調査官は何らかの書面(「預り証」ではなく「留置書」のような名称になるのかもしれません)を発行することは変わらないものと思います。