平成25年12月27日 No75 「退職金を見据える」

 

前回は役員報酬を改定することについて書きました。 役員報酬を増減させるうえで、注意しておかなければ、退職金を見据えた役員報酬額の設定になっているかどうかです。 特に、役員報酬を下げる場合に注意が必要になります。

なぜ退職金と役員報酬に関連性があるかといえば、退職金は一般的にこのような算式で計算されることになっています。

役員退職金=最終月額報酬×在任期間×功績倍率

在任期間というのは、役員に就任してからの年数。
また功績倍率とは、一般的に社長代表取締役で3倍程度といわれています。

在任期間と功績倍率が固定だとすると、退職金は実際のところ、最終月額報酬で決まるともいえるわけです。


実際の例でこういうことがあります。過去法人の業績が良かった頃は、社長も役員報酬を多くとっていた。 しかし、最近業績が悪化し、銀行借入の必要性からも社長の役員報酬を極端に低くし、法人に利益がでるようにしていた。 しかし、社長の体調が悪化し、退任しなければならない状況になってしまった。

ここで、最終月額報酬が10万円など、かなり低い金額になっていると、30年に働いていても、

10万円×30年×3倍=退職金900万円

ということになってしまいます。

もっと退職金を支給したいという要望があっても、実際のところ、税務調査で否認されるリスクを考えると、これ以上大幅に増額して退職金を支給することは難しいこともまた事実です。

日本の税制では、退職金に課される税金は安くなるため、退職金を多く支給することが節税メリットにもつながり、役員退任後の生活の糧にもなります。

こう考えると、法人のことを考えて役員報酬を低めに設定してしまったことが、退職金を多く支給にできないという不測の事態を招く結果にもなり得るわけです。

あまり考えたくないことでしょうが、現実には死亡というリスクも考えなければなりません。 役員報酬を下げた瞬間に発生するリスクというのもあるのです。


役員報酬についてあまり増減させず、現時点での適正額を慎重に考える必要があるのです。

 

 


 過去の税務調査の知識

平成25年12月20日 No74 「退職金を見据える」
平成25年12月16日 No73 「調査手続きの改正内容」
平成25年12月06日 No72 「税務調査の件数減」
平成25年11月28日 No71 「不服申立てA」
平成25年11月15日 No70 「不服申立て@」
平成25年10月25日 No69 「印紙税の取扱いA」
平成25年10月17日 No68 「印紙税の取扱い@」
平成25年10月10日 No67 「修正申告と更正の違いA」
平成25年10月03日 No66 「修正申告と更正の違い@」
平成25年09月19日 No65 「通達は否認根拠になるのか?」
平成25年09月14日 No64 「法律すら変わる」
平成25年09月04日 No63 「守秘義務と個人情報」
平成25年08月27日 No62 「国税調査官の守秘義務」
平成25年08月20日 No61 「役員報酬の改定A」
平成25年08月01日 No60 「役員報酬の改定@」
平成25年06月20日 No59 「交際費の区分A」
平成25年06月10日 No58 「交際費の区分@」
平成25年05月30日 No57 「推計課税とは?」

平成25年05月27日 No56 「税務調査の前にやるべきこと」

平成25年05月16日 No55 「重加算税にも理由」
平成25年05月10日 No54 「理由の附記」
平成25年04月26日 No53 「交際費の基準」
平成25年04月18日 No52 「○○%削ります」
平成25年04月15日 No51 「春の税務調査対応」
平成254年04月09日 No50 「春の税務調査開始!」

平成25年03月22日 No49 「長引く税務調査の対応方法」

平成25年03月18日 No48 「調査日数を減らす」

平成25年02月28日 No47 「税務調査の事前通知A」

平成25年02月22日 No46 「税務調査の事前通知@」
平成25年02月14日 No45 「改正で知っておくべき点C」

平成25年02月07日 No44 「改正で知っておくべき点B」

平成25年01月31日 No43 「改正で知っておくべき点A」
平成25年01月24日 No42 「改正で知っておくべき点@」
平成25年01月18日 No41 「調査官が見ているものA」
平成25年01月09日 No40 「調査官が見ているもの@」
平成24年12月10日 No39 「税務調査で言ってはならないこと」
平成24年11月21日 No38 「税理士抜きで会わない」
平成24年11月14日 No37 「事前連絡がかわった」
平成24年11月02日 No36 「無予告調査って何?」
平成24年10月24日 No35 「反面調査が行われるケース」
平成24年10月12日 No34 「反面調査って何?」

平成24年09月28日 No33 「不当な政務調査の典型例」

平成24年09月18日 No32 「威圧的な税務調査が事件に」
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平成24年09月12日 No30 重加算税の要件を明示

平成24年08月22日 No29 重加算税の具体例

平成24年08月22日 No28 重加算税の要件とは?
平成24年08月08日 No27 修正申告の強要A
平成24年08月08日 No26 修正申告の強要@
平成24年07月25日 No25 青色申告の取り消し
平成24年07月13日 No24 税務署の人事異動
平成24年07月06日 No23 外注費と給与
平成24年06月29日 No22 消費税アップで何が変わる?
平成24年06月21日 No21 退職にそなえる
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