前回は役員報酬を改定することについて書きました。
役員報酬を増減させるうえで、注意しておかなければ、退職金を見据えた役員報酬額の設定になっているかどうかです。
特に、役員報酬を下げる場合に注意が必要になります。
なぜ退職金と役員報酬に関連性があるかといえば、退職金は一般的にこのような算式で計算されることになっています。
役員退職金=最終月額報酬×在任期間×功績倍率
在任期間というのは、役員に就任してからの年数。
また功績倍率とは、一般的に社長代表取締役で3倍程度といわれています。
在任期間と功績倍率が固定だとすると、退職金は実際のところ、最終月額報酬で決まるともいえるわけです。
実際の例でこういうことがあります。過去法人の業績が良かった頃は、社長も役員報酬を多くとっていた。
しかし、最近業績が悪化し、銀行借入の必要性からも社長の役員報酬を極端に低くし、法人に利益がでるようにしていた。
しかし、社長の体調が悪化し、退任しなければならない状況になってしまった。
ここで、最終月額報酬が10万円など、かなり低い金額になっていると、30年に働いていても、
10万円×30年×3倍=退職金900万円
ということになってしまいます。
もっと退職金を支給したいという要望があっても、実際のところ、税務調査で否認されるリスクを考えると、これ以上大幅に増額して退職金を支給することは難しいこともまた事実です。
日本の税制では、退職金に課される税金は安くなるため、退職金を多く支給することが節税メリットにもつながり、役員退任後の生活の糧にもなります。
こう考えると、法人のことを考えて役員報酬を低めに設定してしまったことが、退職金を多く支給にできないという不測の事態を招く結果にもなり得るわけです。
あまり考えたくないことでしょうが、現実には死亡というリスクも考えなければなりません。
役員報酬を下げた瞬間に発生するリスクというのもあるのです。
役員報酬についてあまり増減させず、現時点での適正額を慎重に考える必要があるのです。