前回に引き続き、役員報酬の改定について説明しましょう。
前回は「役員報酬を期の途中で増減できないのは、法人の利益調整をさせないため」と解説しました。
ここで疑問に思う方も多いはずです。「確かに、法人の利益が多額にでそうだから役員報酬を増額して、法人の利益を減らそうとするのは良くない。
しかし、逆ならどうなのか?
つまり、法人の財務状況が危機的な場合に、期の途中で役員報酬を減額することは認められるのではないか」
確かに、法人の経営を考えると、銀行との関係上赤字にできなかったり、また債務超過などもっての外、というのが現実でしょう。
税法上、このように法人の業績が悪化した場合、期の途中で役員報酬を減額することを「業績悪化改定事由」として認めています。
しかし、この規定はかなり範囲が狭く、現実的に期の途中で役員報酬を減額することは難しいと言わざるを得ません。
法人税基本通達9−2−13(経営の状況の著しい悪化に類する理由)
令第69条第1項第1号ハ《定期同額給与の範囲等》に規定する「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、
法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する。
例えば、経営状況の悪化により従業員賞与を一律カットせざるを得ないような状況の場合であれば、役員報酬の減額は認められるものと考えられます。
しかし、一時的に売上・利益が落ちたなどでは、ここにいう「業績悪化改定事由」には該当しないため、減額が認められないということなのです。
この基準が明確ではないため、国税庁は下記の資料をホームページで公開しています。
「役員給与に関するQ&A」(平成24年4月改定)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf
ここでは詳細な説明を省略しますが、ご興味ある方はぜひ上記のサイトをご覧ください。
このQ&Aは一昨年の震災を受けて改定されたものですが、「業績悪化改定事由」による役員報酬の減額は、要件が非常に厳しいことがおわかりいただけるものと思います。
法人のために役員報酬を減額したいと考えても、実行するには要件を満たす必要がありますので、ぜひ注意してください。